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ポーランドの人々にとってはショパンと同じ魂の音楽。
20世紀初めに華開いたやるせないポップスにカツァリスが挑戦!
超豪華なピアノ・アルバムの登場です。なんとカツァリスが20世紀前半にポーランドで華開いたポピュラー音楽をピアノ用に編曲したいわゆる「ノベルティ・ピアノ」に挑戦しました。これらはショパンと同じく、あるいはそれ以上にポーランド人に愛され、戦争を挟んだ時代に人々を愉しませ勇気づけたポーランド音楽史の大切な1ページといえます。
ポーランドは1918年の独立から1939年の第二次世界大戦勃発までの約20年、列強の干渉を受けず独自の文化を発展させました。クラシックではシマノフスキを筆頭に現代的展開を見せますが、都市部とりわけワルシャワではタンゴやフォックストロットなどポピュラー音楽が流行しました。主にユダヤ系の音楽家たちが最高の音楽とエンターテイメントを提供し、ワルシャワの劇場やキャバレーは連日紫煙と香水の匂い、歓声の絶えぬ「大人の社交場」として活況を見せました。
1920年代のパリやワイマールにひけを取らぬ最新流行を採り入れつつ、いずれの曲もショパンと共通するスラヴ的なやるせなさとメランコリーに翳るメロディーが人気の理由で、イェジー・ペテルスブルスキ、ヘンリク・ヴァース、「戦場のピアニスト」ヴヮディスワフ・シュピルマン、さらに若き日のミェチスワフ・ヴァインベルクやその父も中心人物でした。
その流行ぶりは多くの楽譜が出版されたことでも明らかですが、図書館に収蔵される性質のものでなかったためほとんど現存していません。パリ在住のポーランド人物理学者カロル・ペンソンはそうした楽譜のコレクターで、友人のカツァリスへ薦めました。彼は「懐メロ」が現代の聴衆に受け入れられるか懐疑的でしたが、アンコールで弾いたところ非常な反響があり、さらにNIFC社長も強い関心を示したためペンソンのコレクションから厳選してこのアルバムに結実しました。
注目はポーランドのタンゴ王ペテルスブルスキ。代表作「つかれた太陽」はクレーメルも録音しているほか、ロシアのミハルコフ監督の「太陽に灼かれて」やノルシュテインのアニメーション「話の話」で話を代弁する音楽として日本でも人気があります。「つかれた太陽」は男女の別れを退廃的に歌って大戦中のロシアで大ヒットしましたが、オリジナル・ポーランド版「これが最後の日曜日」は自殺する男が恋人と最後を過ごす暗い内容。この魅力的なタンゴと日本でもロシア歌謡として有名な「青いプラトーク」をカツァリスのピアノで聴けるのはこのうえない贅沢といえます。
クラシック音楽的に興味深々なのはシュピルマン作品。彼のピアノ曲は録音も増えていますが本領はポップスのヒットメーカーで、才能を堪能できます。もうひとりヘンリク・ヴァースはスタトコフキ門下で、指揮者ムウィナルスキからも認められた才能の持ち主でした。交響曲やピアノ協奏曲も残していますが、ポーランドで最初のジャズを作曲したとされます。戦後アメリカへ移住し、「フリッパー」の映画音楽などを担当しました。さらにシュピルマンに勧められ、大作曲家ルトスワフスキが「デルヴィド」名義で発表したポップスを聴くことができるのも貴重。 クラシック作品では大チェンバロ奏者ランドフスカのバロック音楽のイメージから遠いショパン的な短調のヴァルス、モニューシコ編曲のクルピンスキの歌、ショパンの歌曲中もっともポーランド的悲哀に満ちた「舞い落ちる木の葉」をペンソンが編曲(リストはこの曲を編曲していない)などがカツァリスの真骨頂。首尾一貫した選曲で、演奏も絶品のひとことにつきます。
当時の雰囲気を伝える写真を多数配した234ページにおよぶポーランド語と英語の詳細な楽曲解説つきのブックレットも注目。ポピュラーソングの編曲とはいえショパンの国ならではのピアニズムも発揮され、ショパン好きなら共感すること間違いなしの、もうひとつのポーランド音楽史が明らかにされます。
東京エムプラス
品番:NIFCCD165
レーベル:NIFC
フォーマット:1枚組 CD
発売日:2026年03月31日
《曲目》
1. レオン・ジェヴスキ (1902-1964)、ジグムント・ヴィェフレル (1890-1977):ワルシャワ小ワルツ
2. イェジー・ペテルスブルスキ (1895-1979):これが最後の日曜日
3. 同:二度と決して…!
4. 同:私は独り寝が怖い
5. 同:君自身が私に言った
6. 同:青いプラトーク
7. 同:私は泣かない
8. イェジー・ペテルスブルスキ、アルトゥル・ゴルド (1897-1943):私は着るものがない
9. ヘンリク・ヴァース(ヘンリー・ヴァース)(1902-1977):夢
10. 同:お前は戻ってくる
11. ヴヮディスワフ・シュピルマン (1911-2000):私はその歌を信じない
12. 同:おまえと私ふたりきり
13. 同:私はお前の心を失った
14. 同:何年かのちに…
15. 同(カロル・A・ペンソン編):私は旧市街へ行こう
16. アルベルト・ハリス (1911-1974):わがワルシャワの歌
17. ヘンリク・ヴァース:愛はすべてを許す
18. ヴヮディスワフ・ダン(ダニウォフスキ)(1902-2000):この数年、私たちに何が残されただろう?
19. ヴァンダ・ランドフスカ (1879-1959):ヴァルス ホ短調
20. ジグムント・カラシンスキ (1898-1973):君の瞳を憶えている
21. アルフレド・グラドステイン (1904-1954):右への橋、左への橋
22. アドルフ・ロズネル (1910-1976):静かに水が岸に沿い流れる
23. ルドミル・ルジツキ (1883-1953):カトン・ワルツ~歌劇「カサノヴァ」より
24. ヘンリク・ヤブウォンスキ (1915-1989):初白髪
25. タデウシュ・シギェティンスキ (1896-1955):ふたつの心
26. ヴォイチェフ・キラール (1932-2013):ヴォカリーズ~映画音楽「ナインスゲート」(カツァリスによる即興演奏)
27. 同:映画音楽「約束の土地」のワルツ(カツァリスによる即興演奏)
28. カロル・クルピンスキ (1785-1857)(スタニスワフ・モニューシコ編):オルシンカ
29. ヴィトルド・ルトスワフスキ (1913-1994):やあ、クラクフから来たよ
30. デルヴィド(ヴィトルド・ルトスワフスキ):ワルシャワの馬車引き
31. 同:今日は誰も来ないだろう
32. スタニスワフ・ニェヴャドムスキ (1857-1936)(ペンソン編):鐘
33. ルツィアン・マリア・カシツキ (1932-2021)(ペンソン編):覚えているかい、秋だったね
34. フレデリク・ショパン(ペンソン編):舞い落ちる木の葉Op.74の17
35. シプリアン・カツァリス:ノスタルジア・マズルカ(即興演奏)
36. 同:アパッショナートとポロネーズ(即興演奏)
《演奏》
シプリアン・カツァリス(ピアノ)
《録音》
2025年4月29、30日、5月1、6日、聖マルセル教会(パリ)
Polish Nostalgia/Cyprien Katsaris
Barcode: 5905683648226